マリエ・シャルマント

マリエシャルマント

10年越しのプロポーズ

「香奈(かな)はまだなの?」
 そう同僚に尋ねられて、私は首を傾げた。
「まだって何が?」
「またまた~、京輔(きょうすけ)君との結婚!」
「あー……」
 お昼に買ったパンに齧り付く。
「あー……ってことは、まだ先なの?」
「……多分」
 あまり考えてもいなかったので、そんな曖昧なことしか言えない。京輔に告白されたのが、高校三年の春。付き合って丁度、一〇年になる。
「あたしらもう二七だよ? 他の同級生達は次々結婚しちゃってさ……」
「でも、香奈は大丈夫だよね。京輔君がいるもん」
「あ、ははは……」
 二人の言う通り、周りの同い年は続々と結婚をしている。
 余裕がある訳じゃないけど、私達は仕事が忙しくて話をしたことがない。ここ最近だって、京輔は連絡をくれない。
 忙しいのはわかるけど、私のことどう思っているのかな?
 そう思っていると、ポケットに入れているスマホが、震え出した。
「何々? もしかして、京輔君?」
「え、うん……久し振りに逢えないかって」
「京輔君ってカメラマン志望でアシスタントしてるんだっけ?」
「うん……」
「せっかくだから逢ってきなよ」
「え、でも……」
 今日納品の雑誌のチェックがまだで、私は残業決定だった。京輔が指定してきた一九時〇〇分には間に合わない。
「しょうがないなー、今度ご飯奢ってよ?」
「いい機会だから話しておいで、ね?」
 同僚に背中を押してもらって、
「うん……っ!」
 と元気に返事をして、残りのパンを食べてしまう。

 京輔に指定された噴水公園にきたけど、誰もいない。辺りを見回していると、シャッター音がした。振り返ると、
「京輔!」
 はにかみながらカメラを持った京輔が立っていた。
「ごめんな、急に呼び出したりして」
 雑誌編集部で働く私と、各地を飛び回るカメラマンの京輔は、時間が合わなくてすれ違うことが多かった。こうして面と向かうのは、いつ振りだっけ……?
「ううん、どうしたの?」
「俺さ、独立が決まったんだ」
「えっ!? おめでとう!」
 それは京輔の夢が叶ったということ。私は素直に喜ぶが、彼は浮かない顔をしていた。
「仕事も決まって……ヨーロッパに行くんだ」
「ヨーロッパ……いつから?」
「来週……しばらく帰ってこれないと思う」
 そんな急に、と言いそうになったけど、言葉をどうにか飲み込む。
 ここでワガママを言って京輔を困らせちゃいけない……。
「そっか……いってらっしゃい……」
 顔を上げることが出来ない。俯いたまま、声をどうにかして絞り出す。
 久し振りの再会に喜んで、彼の夢も叶った。でも、また遠くに行ってしまう事実が、悲しかった……。
「香奈? どうした?」
「何でもないよ……用はそれだけ? じゃあ、帰るね」
「え? ちょっと、香奈!?」
 京輔が私の腕を掴む。彼の手を振り払おうするけど、しっかりと握っている。
「離してよっ!」
「待って、話は終わってないって!」
「夢が叶って、ヨーロッパに行く報告したんだから終わったでしょ!」
 目から大粒の涙が溢れて、頬を伝う。こんな顔、見られたくない!
 勢いよく突き飛ばそうとした瞬間、京輔は手に持っていたカメラを放り投げる。地面に落ちた音がするのと同時に、力強く抱き締められた。
「えっ、ちょっと……」
「話はまだ終わってないから、帰るなよ……」
 右手で私の頬を撫でて、正面を向かせる。
「ヨーロッパでの仕事はいつ終わるかわからないけど、必ず香奈のところに帰ってくる。その時は――」
 ポケットから黒いケースを取り出して、ゆっくりと開く。そこには婚約指輪があった。
「俺と結婚して欲しいんだ」
 突然の言葉に、私は目を大きくすることしか出来ない。
「ごめんな、一〇年も待たせて……」
 指輪を私の左薬指にはめて、京輔は唇を重ねる。
「ん……っ」
 噛み付くようなキスをする彼に、私も応えるように口づけをする。
 出来た隙間に舌を入れて、京輔は私の口内をかき回した。
「ふぁ……っ」
「久し振りの香奈……ヤバイ」
 目を細めて優しく微笑む。
 落としたカメラを拾い、シャッターを押す。
「良かった、壊れてない」
「ちょっと、撮らないでよ……っ!」
 京輔の手が服の中に侵入。下着の上から硬くなった突起を摘まんだ。そのままグリグリと刺激する。
「ひゃあ……っ!?」
 力が抜けて、京輔に抱きつく。彼の膝が、スカートの下に入り込む。
「あれ……? もしかして、濡れてる?」
 足を動かす度に卑猥な水音が、訊こえてくる。
「そんなこと……んんっ!」
 いつの間にか移動した指が、潤った割れ目をなぞる。
「でも、シャッター押す度に……溢れてくるよ?」
 フラッシュが上がると、私の奥から愛液が溢れてくるのを感じていた。
「京輔……」
「ごめん、俺も我慢出来ない」
 そう言うと、突然お姫様抱っこをされる。
「きゃあっ!?」
「今日は帰さないから……覚悟してよ」
「……うんっ!」
 もう一度唇を重ねる。祝福してくれるように噴水が、勢いよく上がった。水滴が輝き、薬指の指輪が微かに光った。

 

作・黒猫千鶴

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