マリエ・シャルマント

マリエシャルマント

イケナイ結婚式

幸せの鐘が、私の中で鳴り響く。

「夢みたい……」
 深呼吸をして目を閉じた。
 大好きな昌(まさ)君と家族になる日。知り合ったのは大学で、彼の方が一つ年上。同じサークルにいて、意気が合って……それからお出かけやランチを繰り返した。始めは友達感覚だったのに、いつの間にか惹かれていった。
「好きだ、有香(ゆか)」
 付き合って欲しいと言われて、初めて昌君の気持ちを知った。
「結婚を前提に付き合って欲しい」
 まだ二四歳の私には、早いように感じたけど……もう、この人しかいないって思った。
「はい」
 ハッキリと答える。
「有香」
 名前を呼ばれて目を開けると、鏡越しに昌君が見えた。
「綺麗だよ、僕の花嫁」
「ありがとう。私、昌君のお嫁さんになれて……嬉しいよ」
 振り返って微笑むと、彼の目が細くなる。照れくさくなった時の昌君の癖だ。
「何かおかしいところでもあった?」
 心配した表情になり、白いスーツを触る。
「ううん、格好いいよ」
 そんな彼の行動に私は、更に笑った。優しくて、少し抜けたところがあるけど……でも、大好きな人。今日から一緒に、家族になる人。
「私の方こそ変じゃない?」
 椅子から立ち上がり、昌君の前で回って見せる。上半身は布がピッタリとして、胸元が大きく開いたもの。腰からは広がってアーチを描いている。
「セットしてもらってる時に、緊張してますね、って言われちゃった」
「そうなんだ。今も緊張してる?」
「ちょっとだけね……」
 苦笑いを浮かべると、彼の手がそっと私の頬に触れた。
「こんなに綺麗なんだから、自信を持ってよ」
 鼻先が当たる距離。黒い瞳に私の顔が映る。鏡で見ていたよりも色っぽく見えるのは、気のせいかな? でも、昌君にはこんな風に見えているのかなって思うと、少しだけ嬉しくなる。
「……ありがとう」
 素直な気持ちを伝える。
 お互いの顔が更に近付き、息がくすぐったい。私は彼の首に腕を回した。
「ねえ、キスしてもいい?」
「うん……」
 承諾の返事を聞くとすぐに昌君の唇が、触れた。優しくて、ついばむようなキス。私は嬉しくて、目を閉じる。
 押し当てられた唇から温かい舌が、侵入してきた。私は何も言わずに受け入れる。絡み合い、唾液を交換していく。私は彼を味わうように、動きに合わせる。

「ん……っ、ふ……っ」
「可愛いよ、有香……」
 声が漏れてしまう。恥ずかしいと思い口を閉ざそうとするが、昌君は許してくれない。私の歯列をなぞり、更に舌を絡ませる。
「ん……ふぁ……あっ」
 二人が離れると、透明の糸が名残り惜しそうに慣れた。彼はそれを掬い取り、舐める。
「有香、台の上に座って……」
 昌君は私の腰に腕を回して、耳元で囁く。そのまま私を持ち上げて、化粧台の上に乗せた。鼻先が首筋を滑るように進み、鎖骨を通過。
「ん……っ!」
 ビクッと反応する私の反応をお構いなし。大きく開いた胸元を温かい舌が這う。手が空いているせいか、彼の手がやわやわと私の胸を揉む。
「ひゃ……あっ」
「こんなに可愛い花嫁を皆に見せるのは……嫌だな」
「何言って……」
 クスッと笑う彼に抵抗しようとするが、いつの間にか背中のチャックを下ろされてしまった。
「ちょっと……昌君……っ!」
「だって、今の有香……誰にも見せたくないんだ」
 露わになった胸に彼は噛み付き、突起を転がす。
「ひっ、あぁ……っ!」
「こんなに色っぽい有香は僕だけが知っていればいい」
 ウエディングドレスの中に彼の手が入ってくる。下着の上から彼の指が当たるだけで、私は昌君を求めてしまう。
 もう少しで式が始まってしまうのに、こんなことしてはいけないのに……。
 隙間から彼の指が侵入してきた。溝を確認するように、ゆっくりとなぞる。
「ひぅ……っ!」
「濡れてるね……」
 クスッと笑うと、昌君は熱くなった自身をドレスに潜り込ませた。愛液が溢れる入口に宛がうと、私の頬を優しく撫でる。
「ごめん……我慢出来そうにないや」
 そう言うと、お腹に圧迫感を感じた。
「ダメ……ま、さくん……んんっ!」
「可愛い有香を……独り占めさせて?」
 お願い、と耳元で囁かれるのは……狡いよ。そんなこと言われたら、何も言えなくなっちゃうじゃない。
 ギュッと彼の白いスーツを握り締めた。
「ありがとう……有香」
 クスッと笑うと、腰を激しく動かす。淫らな音が部屋に響き、奥に昌君の熱を感じる。お互いの激しい呼吸。気持ちいい振動が続く。
「有香……っ」
 腰を掴む昌君の腕に力が込められた。深く彼を感じると、頭が真っ白になったような感覚になる。
「一生、大切にするから……僕以外の男にそんな顔しちゃダメだよ?」
 額に優しい口づけをしてくれる。私は静かに頷いて、昌君に抱きついた。

「ねえ、変じゃない?」
 急いで身なりを正して、何もなかったように装う。
「大丈夫だよ、綺麗」
「もうっ、これから式だって言うのに……」
「だって、可愛い有香がいけないんだよ。皆に見せたくなかったんだから」
「そんなこと言われたって……私は昌君のお嫁さんだよ?」
「うん。そうだね……ごめん」
 触れるだけのキスに私は、心が弾む。怒っていたのに、狡いや。
「じゃあ、行こうか……」
「うん!」
 差し出された彼の手を取り、私は準備室の扉の前に立つ。これから彼と一緒に歩む人生。ずっと傍にいたい。
私の愛した人――

 

作・黒猫千鶴

関連記事

  1. あなたに捧げた純白

  2. 特別なウェディング

  3. 朝の私の彼の起こし方

  4. 先生の婚約者

  5. 10年越しのプロポーズ

  6. 耳元の囁き

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


ピックアップ記事

  1. 結婚式って一生に一度の事だから、綺麗な花嫁でいたいですよね??そんなアナタにとっておきの情報をお…
  2. 最高の披露宴にするための最高の脇役今ではすっかり主流となった、新郎新婦の披露宴での映像の演出…
  3. テーマパーク好き、特に関西方面に在住……等となると、、USJが大好き、USJで結婚式をしたい! と思…
妊婦ですが、あと2ヶ月で結婚できますか?300*250_ママ婚

おすすめ記事

  1. ドレス試着して初めて気づいた!ひじやひざの“黒ずみ”。どうすればいい?!
  2. 結婚式での白は花嫁の色、ゲストが着てはマナー違反
  3. 安くてお洒落で人気のプロフィールムービーをご紹介
にほんブログ村 恋愛ブログ 結婚・ブライダルへ
ページ上部へ戻る