マリエ・シャルマント

マリエシャルマント

あなたに捧げた純白

「これにする!」
 私は白いウエディングドレスを力強く抱き締めて、徹(とおる)さんに見せた。
「いいんじゃない? 麻衣(まい)に似合うと思うよ」
 彼はそう優しく微笑むだけ。
(他にも何か言ってくれてもいいのに……)
 反対されたい訳じゃないけど、徹さんの意見が訊きたい。
 彼はどんなのが好きか、どんなことをして欲しいのか、何が食べたいのか、いろいろ。
「麻衣がいいと思う方が、僕もいいな」
 と言って、はぐらかされてしまう。
(徹さんの考えが知りたいよ……)
「麻衣、試着出来るみたいだから試してみれば?」
 いつの間にか、徹さんは店員さんと話をしていて、試着室を手配してくれていた。
 断る理由もなかったので、私は純白のウエディングドレスを持って、彼の元へと急ぐ。

「どうしよう……」
 トラブルはすぐに起きた。
 ウエディングドレスは、肩が出て胸があれば谷間が見えるなど、見栄えが少しは映えるものなのだが……問題は胸ではない!
「肉が……」
 日頃の蓄積されていた贅肉が、今ここで姿を現した。
「チャックが……」
 腕を後ろに回して、どうにかチャックを上げようとするけど、まず手が届かない。
「どう? 着れた?」
 現状を知らない徹さんが、声をかけてきた。
「え? う、うん……もう少しかな?」
「本当? 早く見たいな」
「え!? それは……本番までのお楽しみじゃダメかな?」
 この状態を徹さんには、見せられない。ダイエットしてるって言ってこともウソになるし、何より恥ずかしい。
「今日はドレス選びだけで……」
 振り返るのと、試着室のカーテンが開いたのは、ほぼ同時だった。
「と、徹さん!?」
 あまりにも真剣な表情で立っているから、一瞬言葉を失ってしまった。すぐに我に返った時には、徹さんはカーテンを閉めて試着室の中に。
「え? ちょっと、徹さん!? 何して……」
「しー、今店員さんがいないんだ」
「だからって入ってこなくても……」
 唇に人差し指を当てる彼が、私よりも幼く見えてしまって可愛い。
(本当は四つも上なんだけどね)
 くすっと笑うと、徹さんが黙って私を見つめる。正確には、ウエディングドレスを見たまま固まっていた。
「なんだ、着てるじゃん。どうして本番までダメって焦らすようなこと言ったの?」
「焦らす訳じゃなくて……」
 ごにょごにょと口籠る。
「え?」
 訊こえなかったらしく、彼が耳を私の唇に近付けてきた。
 私は拳を握り締めて、意を決した。
「チャックが……上がらないの!」
 囁くように、小さく訴える。徹さんはぽかん、としていたけど、優しく微笑む。
「そんなことか。僕が上げて上げるのに」
「だって……」
「ほら、後ろ向いて」
 私は言われた通りに後ろを向くと、徹さんがぷにっと盛り上がった肉を摘まんだ。
「やあぁっ! それが見られたくなかったの!」
「あはははっ、気にしなくていいのに」
 そう言って、彼は背中に口づけをする。
「ひゃっ!?」
「言ったろ、ダイエットなんてしなくていいって」
 盛り上がった肉を甘噛みして、舌が背中を這う。ゾクゾクと電流が走った感覚がして、身体から力が抜けていく。同時に、お腹の奥が熱くなるのを感じた。
 私は試着室の壁に手をついて、徹さんにお尻を突き出す形になる。
「ふあっ、ダメ……っ」
「麻衣は背中が弱いもんね」
 だって、と付け足すと、ドレスを捲り上げた。指先が優しく下着を擦ると、じわりと蜜が溢れるのがわかる。
「もうこんなになってる」
「やっ、そんなこと言わな――」
 身体を捻って、徹さんの方を見ると、彼の唇で塞がれてしまい続きの言葉が止まった。
「少し静かに……店員さんに気付かれちゃうよ?」
 息継ぎで離れたお互いの唇は、再び深く求め合う。舌を絡め合い、どちらかの唾液かわからない銀の糸が、口端から垂れた。
 その間、彼の手は下着の中へと侵入していた。
 指が秘裂をなぞれば、愛液は徹さんを求めて溢れ出す。小さな秘粒を指の腹でグリグリと刺激されれば、腰に電流が走った。
「や……それ以上は……」
「僕が欲しくなっちゃう?」
「っ!」
 徹さんの顔を見れば、悪戯そうに笑っている。
「違……っ!」
「ふーん、こんなになってるのに?」
 つぷり、と指先が入ってきた。
「ひゃあ、んんっ!」
 慌てて両手で口を塞ぐも、快感は止めどなく私を襲う。
「ふぅ、ん……っ」
「麻衣のそんな顔見てたらほら……」
 私の片方の手を徹さんは、自ら股間に持っていく。
「こんなになっちゃった……」
 熱っぽい視線を向けられて、私は何も考えられなくなる。
「ねえ、麻衣……いい?」
 彼の問いかけに、私はただ頷くことしか出来なかった。それを見て、彼は私の耳に軽くキスを落とすと、下着をズラす。自身を取り出して、濡れそぼった蜜壷に突き立てた。
「はぅ、んっ、んん……」
 音を立ててゆっくりと腰を沈めて、彼を飲み込む。
「動くよ……声、我慢しててね」
 徹さんは試着室の壁に私の背中を押し付けて、太腿を掴んだ。そのまま上下に揺れて、膣壁を刺激していく。
「ふっ、あぁ……っ」
 私は声を出さないように、唇を噛み締めて、彼の首にしがみついた。抽送が速さを増す。
(お店の……試着室でなんて……っ)
 そう考えると、急に顔が熱くなる。
「……っ、今きゅうって締め付けたの、わかった?」
 腰を掴み、最奥を叩くように攻める。
 私は首を左右に振ることしか出来ない。
「麻衣のナカ、良過ぎ……もうっ!」
 眉間に深いしわを刻んで、上下運動が激しくなる。陰茎が内壁を擦りながら、奥をノックする。
「徹さん……私……っ!」
「麻衣……っ!」
 深いキスをして、お互いに声を殺す。
 彼が私のナカに熱い欲を吐き出しているのは、二人とウエディングドレスしか知らないこと――

 

作・黒猫千鶴

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